自然の岩を登る

外岩とは?

外岩とは、自然の岩を指します。クライマーの間で共通認識される俗語みたいなものです。例えば、外岩が好きなクライマーが、天気が悪くてジムでばっかり登っていると、「外岩行きてー」となります。

経験上、外岩の楽しみを覚えたクライマーは、ほぼ皆さん外岩が好きになります。

なぜでしょう?

外岩はインドア(ジム)で登るよりも刺激にあふれているからだと思います。

ジムである程度の経験を積んだら、ぜひ、外の岩場へ出かけてみましょう。自然の岩を相手にして、自分の目でホールドを探し、ムーブを探りながら岩のてっぺんに立ったとき、ジムの達成感とは別の感動を得ることでしょう。

ただし外岩は、多くの場合、公共の場であること、また、マットが敷きつめられたジムと違ってケガのリスクが高いのも事実。マナーを守って安全に外岩を楽しみましょう☆彡

課題はあるの?

今でこそ、日本や世界には外岩の有名なルートが多数存在します。有名なクライミングエリアにはトポという課題の案内書が発行されて、販売されているものもあります。有名な課題はクライマー自身により動画が撮影され、Youtubeで公開されています。それらの動画から登ってみたい課題を見つけるのもよいでしょう。

しかしながら外岩のさらなる魅力は「誰も登ったことがないラインを登る」です。誰かが設定したわけでもない自然の造形を己の手足で登ることでしょう。更なる外岩の世界①~初登~で詳しく記述しています

使うホールドは自分で見つける必要があります。それらのボールドをつなげるムーブを探ります。柔らかなマットに守られていない外でのクライミングはジムと違って危険でもあります。

自己の体力と技術を駆使し、且つ恐怖と付き合いながら完登を目指します。見事完登したときには、ジムで経験したものの何倍もの達成感に包まれることでしょう。

外岩の完登はジムとは違う?

外岩とジムの課題で大きく異るところは完登の考え方です。

ジムだと終了点のホールドが指定されていて、それを両手で確保して完登というケースが多いと思います。

一方、外岩でのボルダリングではボルダー(岩)の上の立つことで完登となります。これをトップアウトといいます。

そのために必要なムーブとしてマントルが必要となってくるところも大きな違いでしょう。

外岩に必要なもの

外岩を登るために必要なグッズをまとめてみました。

クライミングシューズ

これがなければ登れませんね。

本気で外岩に取り組む場合、余裕があれば複数のシューズがあると便利です。

ジムで履く練習用のシューズと外岩用の本気シューズです。履き込んだシューズを練習用として、外岩用はここぞという時に履くようにすると良いと思います。

チョーク類

手の汗を吸い取って、手のぬめりを防ぎます。液体のものと粉のものがあります。

必要な時はティップマークといって、ホールドを保持したい位置をマーキングするときにも使用します。ただし、登り終えた時はブラシなどを使用し、できるだけ岩のチョーク痕を取り除いてください。大切なマナーです。

ブラシ

岩についたチョークを落とすために使用します。ただし、金ブラシなど、ホールドを破損させる恐れがあるものは使用しません。各メーカーから専用のブラシが販売されていますが、歯ブラシでもOKです。高い位置のホールドをブラッシングするための長い取手のブラシもあります。

ボルダリングマット

クラッシュパッドとも呼ばれる携帯用のマットです。2-3折りたためて背中の背負えるものが最もよく使われています。

ジムに敷かれているマットほど安全性は高くはありませんが、ある程度の衝撃は吸収してくれます。一部のクライマーはマット敷くことすら良しとしない方もおります。かっこいいですね。

エリアトポ

課題がどの岩にあるか記されたガイド本です。有名なエリアのものは販売されています。

あると便利なもの

サンダル

クロックスタイプのサンダルがあると便利です。普通のクロックスタイプだとクライミングシューズを履いたまま履けます。

課題に取り付くまでちょっとした距離があるときとか利用すると登る前からシューズに土やゴミなど、フリクションを減少させるものでラバーを汚さずに課題に取り付けます。

足ふきマット

サンダルと同じ考え方で、登る直前にシューズのソールについた泥やゴミを取り除きます。最近はボルダリングマットに足拭きマットが内蔵されているものもあります。

先輩クライマー

最初の外岩は特にそうですが、どうすればよいのかわからないという場合に活躍するグッズです。(正しくはグッズではなく生物)

大体、自分も登りたいので呼ばなくても来たがるのが玉にキズですが、先輩面させておくと車を出してくれたりとか便利に使えますので、たまには話しかけてあげてください。草木に水をやるような気持ちで。

その他

食料、水、雨具など、必要に応じて用意してください。

外岩のマナー

外岩は自然の中いあります。岩を傷つけたり、自然を破壊する行為は許されません。

また、エリアを共有するほかの人たち(クライマーではない人たちを含めて)への配慮も忘れないようにしましょう。

一般常識を守る

マナーとモラルは必ず守りましょう。

  • ゴミは持ち帰る
  • 無断駐車はしない
  • トイレは決められた場所で
  • 大声で騒がない
  • 火を使用しない

自分の土地ではありません

土地には必ず地権者が存在します。国、自治体、個人所有などです。地権者や地域住民への配慮を忘れないようにしましょう。

事前に承諾を得て登らなくてはならないケースもあります。これまでクライマー側の問題行動が原因で登攀禁止になったエリアがいくつもありますし、まさに今現在、様々なエリアが問題に直面しています。

クライマー同士のマナーとモラル

  • 自分たちだけでボルダーを占領しない
  • スポッター以外は登っている人に近寄らない
  • 登り終わったらボルダーのチョーク痕をクリーニングすること

チッピングについて

クライミングにおけるチッピングとは、登るルートの岩を人為的に削って新たなホールドをつくり出したり変形させたりする行為、またはホールドを破壊する行為のことです。

法律的には犯罪には問われることは少ないといわれていますが、クライミング界においては大きなタブーとされています。

過去のチッピング事例

チッピングは世界中で行われてきました。その度にクライマー専門誌などで状況がリポートされてきましたが、現代ではインターネットの普及によりネット上で情報が共有されています。ネットを検索すれば過去に行われたチッピング事象がヒットすることでしょう。興味があれば検索してみてください。

https://www.climbing-net.com/news/mitake_181227/

なぜチッピングを行うのか

ロッククライミングは自然が鍛え上げた岩を人間の技能を駆使して登ることに意義があります。いかなる理由があろうと人為的な加工を加えるべきではありません。おそらく世界中の多くのクライマーがそう考えていると思います。それでもチッピングは起こります。その目的は何でしょうか・

その目的は大きく2つに別れます。「登りやすくするため」「誰にも登らせないため」です。

登りやすくする

クライミングの黒歴史として、実はフリークライミング黎明期において、実はチッピングは頻繁且つおおっぴらに行われていました。クライミング先進国、大国といわれるフラ○スとかではむしろ積極的に行われていた時期があったようです。

要は自分が登りたい課題に「デザインする」です。現代ではクライミングジムの人工壁で行う課題のセットを、自然の岩をチッピングすることで行っていたのです。

しかし、自然保護の観点やクライマーの倫理的見地から自然由来の岩を登るために人工的に加工する行為はタブーという意識が高まり、現代ではチッピングは行わないという考え方が主流です。これはチッピングの功罪を知る世界中のクライマーによって受け継がれてきた紳士協定で、多くのクライマーが賛同するところです。

ただし、近年増加傾向にある全てのクライミング愛好家がチッピングの功罪について情報を共有できているのか疑問に思います。また、自己の利益、欲望のために行為に及ぶクライマーが全く存在しないと言い切れないのは事実です。

しかしながら、天然の岩は特定個人や特定団体が独占すべきではありません。等しく共有すべきです。不可抗力による課題の破壊や登攀による破損など不可抗力を除く作為的なホールドの捏造は控えるべきです。

誰にも登らせない

何らかの理由によりそのルートを他人に登らせないことを目的に行われます。特定、不特定の誰かに登らせたくないと考えるクライマーが稀に存在するかもしれません(※私はそういう思考の方にあったことはこれまでありません)。またこの場合はクライマー以外の方によって行われるケースも考えられます。

理由(原因)は様々あると思います。クライミングが嫌い、目障り、自分の土地で勝手に登られていて面白くない、迷惑、愉快犯。。。もしくは我々の想像を超える理由で行われます。

クライマーであるならば、その意思、行為は一般のクライマーと共有できるものではありません。クライマー以外の方による行為である場合、目的・理由は当事者に聞かなければわかりませんが、クライマーの行動が問題視されたために実行に至った可能性は大いにあります。

我々にできることは何か

前者に関して

クライミング愛好家の皆様に「チッピング行為はタブー」であることを啓発しつづけること。特に外岩経験がない、もしくは浅い方々に対して外岩のルールやマナーを知ってもらうことが肝要と考えます。

後者に関して

正解はわかりません。当事者がクライマーの場合、自分が登ったからこの課題は終了=破壊とか、あいつ嫌いだから登らせたくないとか様々な考えがある可能性がありますが、クライマーである限りは啓蒙によって初犯、再犯を抑えることは可能かもしれません。

クライマー以外の方々に関しては啓蒙云々の対象とはなりませんし当然法的な規制もありません。では、岩場を守るためにできることはないのかといえば、実行力はともかく無いことはないです。

先ず認識すべきは、我々が愛してやまない岩を登るという行為は特異な行動であること。我々以外の一般の方々にとっては非常識な活動を行っている「よそ者」であるということ。そういう目で見られている事を自覚する必要があります。その上で我々を、「何かおかしなことをやっているけれど、どうやら無害なよそ者」であると認知してもらうことです。

客観的に想像してください。人間が岩にへばりついてゆっくり動いている様子を。さらにその人を取り囲んで何人かの人間が何か叫んでいる。

クライミングという行為に全く縁がない方々は、あの人達は何をやっているのだろうか?と疑問に思うことでしょう。

更に何やら怪しいその人達は無関係な方々の行動を妨げたり、大声で騒いで岩を汚してゴミを散らかしたまま帰る。。。。

ある人は奇異の目で、ある人は恐怖を感じ、ある人は怒りを感じることもあるしれません。その結果、その岩が登攀禁止となったり、チッピングにあったりする可能性を高めるものと思われます。

更に言えば、その岩が属する土地が私有地である場合には、事前に許可を得ていない場合は不法侵入行為となり得ます。

我々が取るべき行動

そんなに難しく考える必要はなく、常識的な道徳感でマナーを守ることだと思います。

先ず、クライミングは特殊な行為であることを自覚しましょう。そして地元の方と積極的にコミュケーションを図りましょう。

笑顔で挨拶するだけでも○、それをきっかけに更に積極的にコミュニケーションが図れる可能性もあります。そして現場にゴミを残さない、散らかさない。チョーク痕は極力掃除する。火の用心。人の土地にお邪魔している感覚でアウトドアマナーを守りましょう。

また、可能であれば地元のお店(コンビニとかではなくできれば“商店”)を積極的に活用して利益を還元してください。飲み物や食べ物、地物のお土産や温泉とか積極的に現地のサービスを利用することで感謝の気持ちを表明しましょう。

最後にもっとも大事なことはクライミングを積極的に楽しみましょう。せっかく外岩です。ここぞとばかりに登りまくりましょう。ただし、人を驚かすような大声は控えめに。楽しいことをやっているのだと感じてもらいましょう。もしかしたらその人も登りたくなるかもしれません。

啓発の場としてのジム

最近はジムを利用される方が多くなったことで、クライミング愛好者は増加傾向にあります。それは非常に喜ばしいことではありますが、一方ではマナー教育が追いついていないことも事実です。その教育機関として窓口の一つがクライミングジムではないでしょうか。

我々だけの行動で全てのチッピング行為が止むとは思えませんが、微力ながら大好きなクライミングを行える場所の確保に役立つことができれば幸いです。

更なる外岩の世界①
~初登~

外岩の課題にはそれぞれに「名前」があります。有名な課題では「忍者返し」とか「エイハブ船長」とか。

質問です。外岩の課題の名前は誰が名付けたのでしょうか?

答えは、最初にそのラインを登った人が名付けた」です。

クライミングの世界では、昔からの不文律として、誰も登ったことがないライン(課題)を初登した場合、そのラインの固有名称は初登者が名付ける事となっています。何故でしょうか?

諸説あると思うのですが、クライマー連中による畏敬の念、そして完登に対する成功報酬だと考えます。

その大きな理由は事前情報が”ゼロ”の状態から登攀を開始するからです。昨今のYoutube動画なんてものはもちろんありません。スタートから完登までの未知数全てを自己のクライミング能力で解決しなければなりません。初登は難易度に比例して困難を増します。

クライマーは狙ったラインを完登するために相応の実力と努力が必要となります。

課題に命名するということは、全ての問題を解決してついに完登した実績に対する自己報酬。そして初登者の名と共に課題名が全てのクライマーにより畏敬の念を込めて引き継がれていく。と私は思っています。

また、グレード(難易度)も初登者の提案がベースとなります。ただし、再登者が初登者の提案したグレードとは異なると感じた場合は新しいグレードを提案します。再登者が多くなるにつれて課題のグレードが定まっていくこととなります。

更なる外岩の世界②
~開拓~

先に記述した初登を含めた外岩のディープな世界の最先端は何かといえば「開拓」だと思います。

開拓とは、未発表のボルダーやクライミング対象もしくは対象が多数存在するエリアにおいて、任意にラインを定めて登り、課題として成立させていく行為をいいます。

基本的に全てのルートが初登となるので、クライマーとしての力量を存分に試すことができます。

しかし、大変なのはそれだけではありません。先ず、誰も登っていない岩、エリアを発見しなければなりません。そして発見した後にそのクライミング対象が存在する場所の地権者を特定し、クライミングの許可を得て、それから実際の開拓作業となります。

ただし、特に日本では見つけたらすぐ登れるという岩はまれです。岩の表面が苔や泥で覆われていて、下地は倒木や水たまりでマットが敷けない。ということでまずは岩場の整備で土木作業。そもそも岩場にたどり着くまでox時間かかる。。etc

様々な苦労を要して開拓が完了したとして、何かしらの報酬があるわけではないという、ほぼ自己満足のみを満たす行為です。ご興味がある方、ぜひ開拓に携わってみてはいかがでしょうか。開拓に関してはとてもここだけでは書ききれません。

NPO法人
日本フリークライミング協会(JFA)

NPO法人日本フリークライミング協会(JFA)は、フリークライミングの普及と振興を目的に活動しています。 岩場の環境保全、ボルト打ち替え、会報フリーファンの発行、 競技会の開催、ユースの育成、事故情報の収集などを行っているクライマーによるクライマーのための組織です。

アクセス問題と岩場情報には各岩場の様々な情報が公開されており、日本の各岩場における懸案事項が詳しく報告されています。チッピングの記事もあります。